コンポストカフェ by HOUSE for LOCAL、はじめました in FARMERS MARKET
コンポストを暮らしに取り入れるため一緒に学び、語り合うコミュニティの場をつくるべく、EAT LOCAL KOBE FARMERS MARKET内で「コンポストカフェ by HOUSE for LOCAL」をはじめました。12月に行った初回の様子をレポートします。
家庭からでる野菜くずや卵の殻、肉・魚の骨といった生ごみ、庭木の落ち葉などの有機物を微生物の働きで発酵・分解させて堆肥をつくるコンポスト。最近よく聞くカタカナ語のように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、昔から日本の農家でも当たり前のように生活の一部となっている知恵のひとつです。
特にコロナ禍以降は家庭菜園や農的な暮らしに興味を持つ方も増え、コンポストについても話題に上がることが増えました。でも「興味はあるけどいろんな種類があって始め方がわからない」「挑戦したけど虫や臭いが発生して断念した」「マンション住まいでは難しいだろうな」という不安や迷いの声もたくさん聞こえてきます。
そこで、みなさんそれぞれのライフスタイルにあった「わたしらしいコンポスト」を探すワークショップを、土曜日に開催されている朝市、EAT LOCAL KOBE FARMERS MARKETにて開催していこうと思います。これを「コンポストカフェ」と呼んでいますが、お茶でも飲みながら気軽に語り合いましょう!という意味合いです。私たちHOUSE for LOCALがスポンサーとなり、今後3ヶ月に1回程度のペースで開催を予定しています。
でもなぜ、工務店のグループであるHOUSE for LOCALがコンポストに注目しているのか?疑問に思われたかもしれません。買ったらすぐ届く、すぐ使える、使えなくなったら捨てる、そしてまた買う。そんな大量生産・大量消費が当たり前となり、あらゆるモノが早いサイクルで動くようになってしまった現代ですが、家はそうであってはならないと私たちは考えています。
家は自然の循環とともにある長い周期で捉えるものであり、木・紙・土・草といった身近に手に入る自然の素材でつくり、傷んできたら直し、朽ちた部分は自然に還す。そしてその家に暮らす人の生活からもできるだけゴミを出さない、自然の仕組みをうまく活用する暮らしを提案していきたいのです。
山に降った雨は腐葉土に浸透し、田畑やまちの地中を経由しながら川から海へと流れ込む。そして海の水が蒸発して雨となり、また森へと還ってくる。そうした地球の循環の一部に私たち人間の営みが存在します。地球というスケールで考えると壮大な話になり想像し難いですが、もっと身近にたくさんの小さな循環ができることで地球の生態系が保たれるのではないでしょうか。まずは社会の最小単位である家庭からはじめる循環。そのきっかけとして取り組みやすいのがコンポストではないかと考えました。
各家庭から出る燃えるゴミの大半は生ゴミで、しかもその約80%が水分と言われています。もはや「水を燃やしている」とも言える行為は燃焼効率を悪くし、環境に与える負荷が大きくなるという悪循環を引き起こしています。つまり各家庭の生ゴミをコンポスト化することは、巡りめぐって大きく循環型社会につながります。
家づくりに携わる私たちだからこそできる、家と庭、そして自然環境がつながる小さな循環を取り入れた生活を提案していきたいと思います。
ひとえにコンポストと言っても、さまざまな種類の製品や方法があります。農村地域でよく見られる畑に置かれた地上式のものや電動で乾燥させる生ごみ処理機、マンションでも手軽にできるバッグ型の商品、ダンボールコンポストなどなど…。それぞれに特徴があるので自分のライフスタイルと照らし合わせて検討する必要があります。庭の広い一戸建てに住んでいるのか、マンションに住んでいるのか、ベランダはあるかといった住環境がいちばんの判断ポイントではないでしょうか。
そんな中で、今回のコンポストカフェでは私たちが一番良いと思った「竹パウダーコンポスト」のレクチャーを主に開催しました。
出典:ベア・ジョンソン・服部雄一郎(訳) (2016). ゼロ・ウェイスト・ホーム ごみを出さないシンプルな暮らし アノニマ・スタジオ
初回でレクチャーしてくださったのは、三田市で造園業を営むあまがえる株式会社の木下有日子さん。木下さんはご家庭で10年ほどコンポストに取り組まれているそうですが、はじめは他の方法にも挑戦しながらこの竹パウダーコンポストにたどり着き、8年ほど継続されています。
これは農村で問題となっている竹林整備の一環でつくられた竹パウダーを使ったコンポストです。生ごみを竹パウダーに混ぜて堆肥化させる方法ですが、準備や管理に手間がかからず、ベランダ、場合によっては室内でも取り組めるのだとか。比較的どんな住環境でも取り入れやすい方法です。
■ 用意するもの
・竹パウダー
・水
・使わなくなった布でつくった袋
用意するものはいたってシンプル。竹林整備によってつくられた竹パウダーは、マーケットで入手可能です。神戸市北区の農家、ふぁーむ&がーでんヒフミさんが自家製竹パウダー2kgを販売してくれています。
コンポストの種類は主に、嫌気性と好気性のどちらの微生物が働くかで種類がわかれます。竹パウダーコンポストは好気発酵なので、空気を通す布を容器として使います。布は家にある使い古しのカーテンや布団カバーなどなんでも構いません。ゴミを出さないためのコンポストづくりなので、できるだけ家にあるものや身近で手に入るものでつくりましょう。
木下さんがつくってこられた布袋は42cm×52cmのもの。あえて縫い目を外側に見せて使うことで、袋の隅に産み付けられた虫の卵を発見しやすくなるという工夫もされているのだとか。使わなくなった枕カバーをそのままリユースするのもいいですね。あまりこだわりすぎず、簡単かつシンプルにはじめることがポイントです。
■ 使用方法
1.袋に竹パウダーと水を投入
2.刻んだ生ごみを投入(刻めば刻むほど分解が速くなる)
3.袋の中が均一になるようにかき混ぜる。水分の量を確認し、乾いていれば水分を加えながら混ぜる。
作り方もとても簡単で、袋に竹パウダー2kgと水1L程度を入れて、ブロックや板の上など少し地面から浮かせて置いておくだけ。置き場所は庭でもベランダでも、粉の飛び散りが気にならなければ室内でも。好気発酵は空気を好むので人間が生きる環境と同じ。だから嫌気発酵と比較すると生臭さを感じにくいそうです。
竹パウダー2kgに対して、毎日200g程度生ごみを混ぜ込むことができます。有機物であれば入れてはいけないものは特になく、野菜くず以外にも賞味期限切れの牛乳や天ぷらの揚げ油、コーヒー豆カスでもなんでもOK。
木下さんの場合は料理をする際に、まな板の横に生ごみ用の弁当箱を置いてそこへ野菜くずを貯めていくのだとか。弁当箱がいっぱいになったらコンポストに投入してしっかり混ぜ込みます。そうすれば三角コーナーも不要だし、容器がいっぱいになるまで冷蔵庫で管理可能です。
日々の管理としては、水分量を気にかけながら調整していきましょう。乾燥していると発酵が進みにくく虫が湧いてきたり、水が多すぎると嫌気発酵となり生臭い匂いがしてきます。
適切な水分量は40%と言われていますが、感覚としては手で握って団子を作り、手を開いた時に団子がポロッとほぐれるくらい。水分が足りなければ水や米のとぎ汁を入れて、袋全体に行き渡るように調整しましょう。
毎日200g有機物を入れると、大体3ヶ月で最初の竹パウダーの倍量になります。そうなったらもう1枚袋を用意して、半分を移し替えます。
もとの袋に残った半分はそれ以上有機物を加えず、水分調整だけしながら2〜3週間おいておくと堆肥の出来上がり。移し替えた半分はまた引き続き生ごみを入れながらキープすることで、糠床のように一生付き合っていけます。
もし虫が沸いてしまった場合は竹パウダーを追加したり、米ぬかや油を混ぜ込んで温度をあげます。コンポストの菌がいかに働いてくれるかが大切なので、袋の隅々まで空気と水分を適度に行き渡らせ微生物の生きやすい環境をつくることがポイントです。
竹パウダーコンポストで分解されたものは、ぼかし肥(投入した生ごみが分解されわからなくなった状態の肥料)にあたると考えられます。しっかりと分解されていると肥料成分(ミネラルなど)があり、効き目が早い。そして分解者である微生物も含まれているので持ちがいいと考えられています。
植物、特に作物によって施肥できる量やタイミングを判断するのはなかなか難しい。そこで「表土にまく」という使い方をおすすめしています。落ち葉などでマルチしていたら、その上からパラパラっとまくだけでOK(その方法ならふるいにかける手間も不要です)!
栄養分は水分と一緒に土に染み込み根から吸収されると考えられます。未分解のものが土の中で分解されると植物の生育に何らかのリスクが考えられますが、表土にまく使い方であればそのような心配もありません。
キッチンと庭や畑・ベランダがつながる暮らしを理想としてスタートするコンポストカフェ、今後3ヶ月に1回の頻度でマーケットにて開催を予定しています。ぜひみなさんも輪に入り、一緒に楽しみながらチャレンジしてみてください。
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