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interview

地域の素材を使いながら
自分たちも家をつくり育てる楽しみ

工務店:大塚工務店

兵庫県明石市にあるSさん一家のお宅は、築5年ほど。とはいえ旦那様は自分で家や電気系統の工事を手がけてみたかったこともあり、じつはまだまだ中身は手がけている真っ最中なのだと、笑って話します。東京から引っ越してきた木の家の住み心地はいかがでしょうか?

この明石の土地を選ばれたのはなぜですか?

もともとここには昭和40年代くらいに建てられた祖父母の平屋の家がありました。その家をそのまま受け継ぎ、自分たちが死ぬまでは使えるように大幅に改装するか、あるいは新しく建て直し、もしかして次は自分たちの孫の代までくらい、できれば100年住めるような感じにするかを検討していました。とはいえ実際のところ、もとからあった家はもう土台なども寿命がきている感じだったので、ならば自分たちのやってみたかったことに挑戦しつつ新しいものを建てようか、と。家自体は小さくてもいいから、自分たちが楽しいものにしたいなと思っていました。

セルフビルドにも挑戦されているんですよね。

自営業でマッサージ店を営んでいますが、2店舗目の内装工事をDIYで手がけてちょうどおもしろいなと思っていたタイミングだったのもあり、また木材の端材などでいろいろ工夫してみた経験があったので。それならば自分の家もできるところは自分で手を動かしてみたいな、と。本を読んで勉強しつつ現場で職人さんにも教えていただきつつ。でも実際に家をやってみると、プロの仕事は本当にすごいなあとあらためてよくわかりましたけれども!

でも、電気系統までご自身で手がけられたとは驚きです!

太陽光発電は取り入れてみたかったんですよね。完全なるオフグリッド住宅となるとまだちょっとハードルも高いかもしれませんが、今は小さな太陽光パネルを自分でのせて、自宅での太陽光発電だけに頼る系統、電力会社からの買電を使う系統、そしてそのふたつのうちいずれかを切り替えられる系統の3系統で暮らしてみています。関西に台風が来て停電被害が大きかった時、我が家も10時間停電しました。でもその時は冷蔵庫の電源を、太陽光発電の自家消費するモードに切り替えて、冷蔵庫などもしばらく保ちましたね。こうやって自分でやってみればいろんなことがわかるし、平屋だと挑戦しやすい。家の成り立ちについてわかっていることが多いと非常時・災害時などにも手が打ちやすいんだなと実感しました。実際のところ自分でつくることで費用面でも約300万円くらい浮いているかもしれないけれど、それって価格を抑えるためというよりは、“自分でやってみたい”という気持ちが強かったです。かれこれもう家に住み始めてから5年近く、つくり続けていますが、じつはまだまだ完成していないところだらけなんですよね(笑)。庭も整えていきたいですが全然まだ手入れできていない!あとは自転車置き場も家の前につくっていきたい……などなど。自分たちで明石のサグラダファミリアだね、と笑っています。

材料についてはこだわりがありますか?

先ほどの話にもあったように、もともと自分の店舗のために木材を使って自分で改装した経験があって、そこから木の魅力に気付いていったので、木の家にはしたいと思っていました。2010年頃、東京でふたりめの子育てをしはじめた妻が産休中に「東京でずっと子育てしていくというのもどうなんだろう……」と思い始めた時期とも重なりまして。妻も“地産地消”“身土不二”といった考え方に興味があったので、せっかくならば木の家を、地元の兵庫県産木材で作ろう、というのも割と早い段階から我々の考え方としてはありましたね。その頃に、大塚工務店さんと出会ったんです。大塚さん自身もとても勉強されていて、試してみたい建築のプランもお持ちだったので、「ならばそこで一緒に工夫しながら楽しめるかもしれない」と思えたのが大きかったです。兵庫県の木材を使用したい、という要望にも積極的に応えていただき、『森の見学会』という勉強会にも参加させてもらいました。

実際に山で素材を確認できる見学会があるんですね。

はい。山まで一緒に行き、木こりの方に会い、実際に自分たちの家で使用する予定の木も見せていただきに行きました。1日で山にある木材から裾野の製材所まで見せてもらえる。子ども達も一緒に見に行ったので、家の成り立ちを素材の段階から知られたのもよかったように思います。うちで使わせてもらったのは、宍粟産の構造材ですね。兵庫県は県産木材を使うことを推奨していて、『兵庫県の木造住宅ローン』という資金繰りにも有利な制度があるので、そういったことを利用できるのもすごくよかったです。

家の住み心地はいかがですか?

夫婦共に実家は2階建でしたが、大抵の場合、親が歳をとると2階はただの物置き場のようで使わなくなってしまう。結局広くても片付ける場所がどんどん増えるという手間も今からあるし、だったらもう思い切って平屋にしよう、と。そして思い切って平屋にしてみてよかったな、と今は思っています。家族も常に顔を合わせますしね。ちなみにこの家は西向きではありますが、夏に暑くなりすぎないよう、直射日光の入らない北向きの屋根に開閉ができる天窓をつけ、熱たまりを逃せるように工夫しました。庭にはウッドデッキもつけ、日射遮蔽としてよしずやすだれなども用いていますね。このあたりは“まぜ”と呼ばれる明石海峡から吹く偏西風が届くので、夏でも涼しいです。ちなみに間口を広く、奥行きを浅くしたつくりなのもあり、かなり長い時間、太陽光が家の中に入り続けるので、冬の午後は暖かいです。長期優良住宅という形で普通に断熱はしていますが、そこまで特別なことはしていません。全方位に窓があり、家全体がワンルームになっていることで空気が循環しやすくなり湿気もたまらない。実家に帰った時や、以前の集合住宅の感じとはまったく違うな、と思います。クローゼットに除湿剤を使わなくてよくなったのも印象的。寒さに関してのストレスもほぼないと言えるんじゃないかな?外壁には播州でよく見られる黒い焼杉板を、自分で貼りました。炭まみれになって手がけた達成感もあり、その土地の文化を受け継ぐという意味でもとっても気に入っています。

これから家を建てようとする方にも魅力あるお話、ありがとうございます。

長い目でみたら、“一度、自分でやってみる”というのは家の構造や成り立ちが理解できるし、自分で修繕・メンテナンスできる部分が多くなる、ということでもあるので。何かちょっと壊れた時にすべて人に依頼しなくても自分たちで直せるのは魅力的だな、ということで。まあなんといっても素人仕事なので最初はいろいろと細かい部分が不細工でしたけども!そして壊れてもくる。でもそれは作った時も自分で経験していることだから、逆に言えば修繕も自分でしやすい。そうやって家のあれこれを育てつつ、住んでいる自分たちも一緒に育っていく、ということが楽しいのかな、と思います。