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住宅密集地の風土を
活かして建てた家

工務店:いなほ工務店

大阪府高槻市の住宅街で暮らすNさんご家族が建てた風土と暮らす木の家は、家に入ると住宅密集地であることを忘れてしまうような、巧みな窓の配置が光る家。建て替えて1年半ほど経て感じていること、工務店で家を建てようと思った経緯などを聞いてきました。住宅街でも気候風土の特徴を取り入れながら暮らしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

新築されてから1年半ほど住まわれてみて、住み心地はいかがですか?

同じ土地なのに、3〜4倍くらい空間を活用できている感覚があります。面積は30坪ほどで、建坪的には前の家より狭くなっているはずなのにすごく不思議です。あと、前の家では屋内でも霜焼けになるほど寒かったのですが、新しい家は室温が年中快適に保たれているので気温の変化そのものを感じなくなりました。不都合は感じやすいものですけど、快適って感じなくなることなのかもしれませんね。ほんと、前の家とは比較できないほど快適です。空調は床下エアコンと吹き抜けにあるエアコン1台だけなので、室内に入ってくる光や空気の流れを計算して考えてくださった間取りの影響が大きいのだと思います。

家づくりを依頼される際に、どのような要望を伝えられたのでしょうか?

寒くなくて、明るくて、使いやすい間取りの家をお願いしました。なかでも一番の要望は「あったかい家」だったと思います。前の家が築40年以上で、先ほども言ったように寒くて、あと昔ながらの間取りの多い家だったので暗かったんです。そのため、「部屋を区切らない」を合言葉に設計プランニングが始まりました。実は、他の工務店さんにもプランをご提案いただいていたのですが、間取りで区切るプランが多かったんです。でも、いなほ工務店さんは、吹き抜けを活かした「誰にでも便利な家より、おもしろいオンリーワンの家を」というご提案がおもしろくて。

吹き抜けの天井に窓があるのですが、実はあの窓から設計が始まりました。ここは家が密集してる住宅街なので、周囲の視線を気にすることなく光を取り込める方法から考えてくださったんです。なので、あの窓は隣の家より少し高い位置に設置になっていて、光の反射具合や角度といった面からガラスの種類にもこだわっていただきました。

工務店で家を建てようと思ったきっかけは何でしたか?

ハウスメーカーがいいのか、工務店がいいのかはずっと迷っていましたが、いろんな工務店さんの家を見学できる『里山住宅博』に行ったのが決め手でした。2回足を運んだのですが、「良い」の感覚が合ったのがいなほ工務店さんだったんです。

そういえば、玄関を入ってすぐに和室という間取りにしてもらったのも、里山住宅博で見学した家がきっかけでした。和室って奥まった場所に作りがちですけど、玄関を入ってすぐなら毎日のように使う場所になるなと思い同じようにしてもらいました。古い家で暮らしてきたから畳や漆喰のような自然由来の素材の良さは知っていたので、新しい家にも取り入れたいと思っていたんです。木の床もそうですね、建て替え前の家は杉板の床だったので。

他にも特にこだわった箇所はありますか?

こだわったと言えば、数センチ単位で調整してもらったキッチンです。前の家のキッチンは暗くて、寒くて、さらにリビングと離れていて孤独な場所だったこともあり、一番時間をかけて作り込んでもらいました。ステンレス張りでMieleの食洗機を入れるという漠然としたイメージはあったのですが、どう選んだらいいのか分からなくて。そうしたらいなほさんが「何でもやります!」と言ってくださったので、最終的には家具・家電からコンセントの配置まで細部まで考えて実現していただきました。最終的に、いなほさんの持つこの家のためのファイルが、通常の2倍くらいになったそうですが(笑) イメージを伝えるのは難しいですが、こういったところでも「良い」の感覚が近くて助かりましたね。

あと、2018年に起きた大阪府北部地震の経験から太陽光パネルと蓄電池を設置しました。蓄電池は高額でしたが、災害を経験したことで導入に踏み切れましたね。ちなみに、電気代は真夏と真冬以外は電気代を支払っていなくて、反対に¥8,000ほど売電できています。前の家の光熱費よりもトータルで安くなりました。ランニングコストを考慮して床下エアコンを提案してくださったおかげだと思います。

地震は日本各地で起こりうる災害ですが、地域特有の災害に備えて家を建てるのは大切ですね。

そうですね、蓄電池は使う時が来ないほうがいいのですが、あるのとないのでは安心感が違います。最近は地震だけでなく、台風の勢力も強くなってきていますからね。

地域の過去の災害や、日照の時間や方向の傾向など、住宅街で家を建てる際にもその地域の風土は切り離せないのだとあらためて感じました。貴重なお話、ありがとうございました。

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