これが新築!? 土間のある平屋
工務店:あかい工房
兵庫県神戸市北区にあるYさんのお宅。水田と畑の広がるなかに建つ木の家は、外観を一見する限りでは築年数不詳、杉の焼板を使った、風景にしっくりと馴染む平屋です。ここで暮らし始めて早5年。暮らしの楽しみや新しい発見など伺います。
特に冬がいいですね。土壁のせいなのか想像以上に暖かいです。近所に住む友人たちも「この家は気持ち良いねえ」と、泊まりがけで遊びに来てくれたりしていますね。我が家は小学生の息子がふたりいるのですが、その友達の一人はわざわざこの遠くまで電車に乗って遊びに来てくれる子も。その子はきっと、玄関を入ると土間があったり、床が畳で、襖や障子を開くとひとつづきになっている構造に面白さを感じているみたいですね。武家屋敷の中にいるような雰囲気が楽しさを感じているようで。冬はエアコンだけでなく薪ストーブもありますし、夏は窓を開けていると風がよく通ります。
ガラスの天井(天窓)があるので、昼間だと電気をつけていなくても明るいところでしょうか。ここは周りに大きい建物があるわけでもないですし、自然光をこれだけふんだんに取り入れられるのは贅沢なのかもしれません。贅沢なのに、電気は節約できているともいえますよね(笑)。畑が家の隣でできるのもいいですよね。あと、土間も気に入っています。ちょっと無骨というか堅牢というような雰囲気を感じられるので、息子たちも楽しんでいるようです。
家のすぐ裏に川が流れていまして、夏になるとそこで水浴びとか、もう本当にいくらでもできるので。プールいらずの生活になっているような。「羨ましいなあ、君らこんな家に小さい時から住めてええなあ」って、親ですけど思っています(笑)。
以前は明石のほうで賃貸契約の普通のマンションに家族で住んでいたので、畑とは無縁の生活だったのですけどね。とはいえ、「いずれは古民家とか買って、手入れをして住んでみたいなあ」という気持ちは持っているような夫婦でした。この土地でなかったとしても「できれば家庭菜園的に野菜を育ててみたい」ということをぼんやりとは思っていましたが、たまたまおじいさんの家の周辺の道路の整備があったり、それで家の建て替えが決まったりといったタイミングで、私たちもこちらに引っ越してくることを決めて。それならば畑も少し使っていいよと言われ、初めての畑仕事が始まりました。とはいえ、普段は仕事や子育てもあり、今は本当に、できる程度のことを週末にちょっとずつやってみている、という感じです。
もとは全く、工務店のことを知らなかったんですよ。でも家を建てるとなって、まあ最初は普通に、ハウスメーカーの展示場など巡りながらいろいろ検討していました。そんななか、一度、あるメーカーのモデルハウス試泊体験に行ってみたのですが、なんと夜に一泊しただけでものすごく乾燥していて、妻の体質に合わないんだなということがわかりまして。僕も体質的に合わない建築材や構造があるとは考えたこともなかったので驚いたんですけどね。でも「そういうことならばもっとちゃんと考えないと」と気付けたところからあらためていろいろと調べていきました。たまたま森田建築設計事務所さんの手がける建築に興味を持ち、設計を依頼し、森田さんより「兵庫のこの辺りで家を建てるならば地元のあかい工房さんでしょう」とご紹介いただいたのがきっかけでした。『あかい工房』は、私がこの付近で知っていた木をふんだんにつかったお店なども多数手がけられていますし、我々も完成のイメージがしやすく、いろいろと相談に乗ってもらった結果、このような、新築でありながらちょっと古民家のような雰囲気がもとからある、平屋の日本家屋になっていった、という感じです。
冬は薪ストーブがとても暖かくて、しかもストーブで出た灰はそのまま畑にまわして肥料にできるのも無駄が無くていいです。あかい工房さんが実施されている薪割りの体験会に僕らもこの家を建てる前に何度か参加したりしましたし、そこからこういった家に興味を持つ方も多いようです。また、家の横にコンポストも設置したので、ゴミ処理も楽だしこれまた畑の肥料になるので、生活をしているだけでも、ますます畑仕事にも精を出したくなります。とにかく手入れは大変ですけどね!住んでいるうちにいろんな発見があって面白いです。ここ神戸市北区は、大阪や三宮もアクセスしやすいエリアですが、もうこの田舎の住まいの周りだけでもまだまだこれから勉強しなくちゃならないことがたくさんあるので、実際のところは「田舎暮らしってスローで素敵……!」なんてことはほとんど無くてかなりタフなものですよ!
最初に話したように、子どもたち自身も、そのお友達も、家族ぐるみでお付き合いのある人たちも「なんだかほっとする」とこの家に親しんでくれているので嬉しいです。あかい工房さんも「なぜだか長居したくなる季節を感じる家」を提唱されていて、そういうことなのかもしれませんね。経年変化の楽しみはもちろん、自分たちが大切にしたい細部の味わいが浸透していく家になったらいいなと思います。